Audible(オーディブル)は、Amazonから提供されている、月額1,500円のオーディオブックのサブスクリプションサービスです。プロが朗読した音声で耳から読書することができるので、通勤・通学・家事・ウォーキング中の ながら読書が可能となります。
私は入退会を繰り返していましたが、聴き放題サービスになってから会員を継続しています。
今ではオーディブルなしでは暮らせないほどに愛用しています。良い作品に出合った時は、仕事の移動時の車の中やウォーキングが楽しみになります。
今回はオーディブルの小説のオススメを4作品だけご紹介します。
オーディブル作品独特の評価の方法と一緒にご紹介するので、1作品ごとの紹介が長くなってしまい4作品に留めておきます。
オススメ基準
新作・話題の小説・本屋大賞・受賞作など、良い小説作品は色々とあります。
しかしながら、朗読・オーディオブックという形式なので、素材の小説が良ければオーディブル作品も良いという事にはならないんです。
ナレーターに関しては、吃音やブレス、間の取り方、区切り方、語尾、読み方が気になる癖の強いナレーターも居ます。
「この作品は違う性別のナレーターに朗読して欲しかった」というレビューも多く見受けられます。
評判の悪いナレーターでも自分は好きという事もありますので、レビューが悪くても冒頭部分だけでも聴いてみる事をお勧めします。
また複数のナレーターでラジオドラマのような作品や、男女の掛け合いの作品などもあります。素材を活かしているのもあれば、素材の空気感が消えてしまっている残念な作品もあります。
中には効果音を入れ込んでいて、それが朗読に対して賛否両論が分かれる作品もあります。
ナレータも含めたオススメ作品を幾つかご紹介します。
賛否両論サンプル
ナレーターと小説の相性、ナレーションの癖の強さで賛否両論が分かれるタイトルが幾つか存在します。
そのうちの代表作をご紹介しておきます。
「あらすじ・解説」はオーディブル公式の解説文です。
ノルウェイの森
著者: 村上 春樹
ナレーター: 妻夫木 聡
再生時間: 8 時間 9 分
限りない喪失と再生を描く究極の恋愛小説!暗く重たい雨雲をくぐり抜け、飛行機がハンブルク空港に着陸すると、天井のスピーカーから小さな音でビートルズの『ノルウェイの森』が流れ出した。僕は1969年、もうすぐ20歳になろうとする秋のできごとを思い出し、激しく混乱し、動揺していた。限りない喪失と再生を描き新境地を拓いた長編小説。
「俳優の妻夫木聡さんのナレーションが淡々としていて抑揚が無くダメだ!棒読みだ」というレビューが多数あります。しかしながら、作品ページにある妻夫木さんのインタビューでは「芝居風に押し付けるのではなく、言葉を届けるサポート役として朗読しました」とあります。最初にそのインタビューを見た上で作品を聴くと、淡々としたナレーションも意味を持って感じられます。
私は最後まで聞きましたが「作品を楽しめたが少し物足りない」という印象です。特に酷いとは思いませんでした。
ちなみに私はハルキストではありませんが彼の作品は好んで全て読んでおり、何度も読んだ作品も多いです。
37歳のワタナベは、ハンブルク空港に到着した飛行場のBGMでビートルズの「ノルウェイの森」を聴いて、学生時代のことを回想した物語。
村上作品特有の主人公が何故か女性からモテるという設定は不変で、とにかく性描写が多い作品です。ここでは内容に関しては触れませんが、物語と関係ないようなシーンや会話が好きです。以前は「洗濯物を畳むのは嫌いじゃない」といったセリフにも何か意味を持たせてるのではないか?と考えていました。今は無意味なシーン、会話がワタナベの学生時代の空気感を伝えるためだけのメタファーだと流して解釈しています。
オーディブルで聴き放題のおすすめ小説
ザリガニの鳴くところ
著者: ディーリア オーエンズ, 友廣 純
ナレーター: 池澤 春菜
再生時間: 16 時間 52 分
ノース・カロライナ州の湿地で男の死体が発見された。人々は「湿地の少女」に疑いの目を向ける。6歳で家族に見捨てられたときから、カイアは湿地の小屋でたったひとり生きなければならなかった。読み書きを教えてくれた少年テイトに恋心を抱くが、彼は大学進学のため彼女のもとを去ってゆく。以来、村の人々に「湿地の少女」と呼ばれ蔑まれながらも、彼女は生き物が自然のままに生きる「ザリガニの鳴くところ」へと思いをはせて静かに暮らしていた。しかしあるとき、村の裕福な青年チェイスが彼女に近づく…みずみずしい自然に抱かれて生きる少女の成長と不審死事件が絡み合い、思いもよらぬ結末へと物語が動き出す。全米500万部突破、感動と驚愕のベストセラー。
2019年・2020年と2年連続でアメリカで一番売れた本でもある大ベストセラー小説です。2022年には映画化もされています。内容は「あらすじ・解説」を読むとスリルとサスペンスの早い展開の物語のように想像してしまいますよね。
しかしながら、実際は主人公女性の狭い世界観とゆっくりと流れる時間。そしてリアルな自然描写で作品に溢れる空気感が素晴らしい。
筆者のディーリア・オーウェンズは、もともと動物学者なので自然の描写が秀逸です。
ナレーターは 池澤 春菜さんという声優・俳優の女性です。感情が入った朗読で、最初は長く聴けるか不安でしたが、すぐに引き込まれました。むしろ彼女の朗読が正解と思えるほど、自然に違和感なく読み聞かせてくれます。
未明の砦
著者: 太田 愛
ナレーター: 山内 平
再生時間: 21 時間 14 分
その日、共謀罪による初めての容疑者が逮捕されようとしていた。動いたのは警視庁組織犯罪対策部。標的は、大手自動車メーカー〈ユシマ〉の若い非正規工員・矢上達也、脇隼人、秋山宏典、泉原順平。四人は完璧な監視下にあり、身柄確保は確実と思われた。ところが突如発生した火災の混乱に乗じて四人は逃亡する。誰かが彼らに警察の動きを伝えたのだ。所轄の刑事・薮下は、この逮捕劇には裏があると読んで独自に捜査を開始。一方、散り散りに逃亡した四人は、ひとつの場所を目指していた。千葉県の笛ヶ浜にある〈夏の家〉だ。そこで過ごした夏期休暇こそが、すべての発端だった――。自分の生きる社会はもちろん、自分の人生も自分で思うようにはできない。見知らぬ多くの人々の行為や思惑が作用し合って現実が動いていく。だからこそ、それぞれが最善を尽くすほかないのだ。共謀罪始動の真相を追う薮下。この国をもはや沈みゆく船と考え、超法規的な手段で一変させようと試みるキャリア官僚。心を病んだ小学生時代の友人を見舞っては、噛み合わない会話を続ける日夏康章。怒りと欲望、信頼と打算、野心と矜持。それぞれの思いが交錯する。逃亡のさなか、四人が決意した最後の実力行使の手段とは――。
最注目作家・太田愛が描く、瑞々しくも切実な希望と成長の社会派青春群像劇。
家庭環境などの理由から、学歴がなく非正規工員として車の工場ラインで働く若い4人。無知だった彼らが労働者、雇用者、労働組合、日本の大手メーカーの実態などの知識を得た時に何が起こるか?甘く切ない物語です。
住宅、車、病院、保養所、火葬場まで全てが用意されている、大手自動車メーカーの「城下町」で暮らす保守的な人々。世界と比較しても「生産時間が圧倒的に短い」=「ノルマが厳しい」と言われる日本の車メーカーの過酷な工場労働。
どこまでが事実に沿った内容なのか?読み終わる頃には車メーカーに嫌悪感を抱いてしまいました。
ナレーターは滑らかに演じ分けてくれて、自然に物語に入り込めます。
正体
・著者: 染井 為人
・ナレーター: 渡辺 紘
・再生時間: 20 時間 3 分
埼玉で二歳の子を含む一家三人を惨殺し、死刑判決を受けている少年死刑囚が脱獄した! 東京オリンピック施設の工事現場、スキー場の旅館の住み込みバイト、新興宗教の説教会、人手不足に喘ぐグループホーム……。様々な場所で潜伏生活を送りながら捜査の手を逃れ、必死に逃亡を続ける彼の目的は? その逃避行の日々とは? 映像化で話題沸騰の注目作!
この作品はドラマ、映画化で有名ですね。脱獄囚の少年が様々なコミュニティで人々と触れ合いつつも、逃亡中という事で深く関われないという切ない内容。
サリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」のような圧倒的な孤独感が作品の魅力です。
逃亡犯という事もあってか法律に精通しているのが彼の武器。朴訥で真面目、他人のために自分を犠牲にできる思いやりがある主人公。
彼は本当に犯罪を犯したのか?何故?
私はオーディブルで聴いて気に入ったので、紙の小説も読みました。
映画も良く出来ていたのですが、ドラマも含めて映像版は原作とエンディングが全く違っています。原作小説のエンディングこそがこの作品のキモです。私としてはドラマ・映画版が受け入れられないです。
ナレーターの 渡辺 紘さんの朗読も絶妙で、陰のある主人公から老人、女性まで何役も演じ分けていても全く違和感なく自然に伝わります。
雪国
著者: 川端 康成
ナレーター: 榊原 忠美
再生時間: 4 時間 35 分
”国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。夜の底が白くなった。” とはじまってゆき、”「この子、気がちがうわ。気がちがうわ。」・・・・” と、終わってゆく。 雪にはじまり、炎におわる、薫りたつような一編。 うつろいゆく愛を描いた、すみずみまで美しくエロティックなこのノーベル文学賞受賞作を、俳優であり、また「『木を植えた人』を聴くプロジェクト」等で知られる朗読家である 榊原忠美が、じっくりとよみあげました。 「伊豆の踊り子」、「奥の細道」に続く、演出家・水城雄とのコラボレーション作品です。時間をかけ満を持してお届けする会心の作品です。 ”・・・踏みこたえて目を上げた途端、さあと音を立てて天の河が島村のなかへ流れ落ちるようであった
この小説は知らない人は居ないですよね。川端が受賞したノーベル文学賞の審査対象となった作品でもあります。
「川端康成」と聞いただけで難しそうで避けている人も多いですよね。
とにかくエロティックな内容で純文学?大衆文学?と言われる作品です。「こんなエッチな小説を国語の文学史で暗記していたのか」と思うんじゃないかな?
列車の中で病人の男に付き添う恋人らしき若い娘(葉子)に興味を惹かれる場面からはじまります。
彼女の描写だけで読み手も葉子に魅かれてしまい、作品をとおして気になり続けます。
物語の内容にはあまり触れませんが、トンネルを抜けて若い芸者の駒子に逢いに行く既婚男性「島村」の物語。
美しい日本語で雪国の男女の剥き出しのもつれを描いています。何度読んでも聴いても素晴らしい作品です。
榊原忠美さんの静かで落ち着いたナレーションが作品の繊細さを際立たせてくれます。
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