VHSビデオや8ミリなど、アナログビデオの動画をキャプチャーして、デジタルデータとして取り込んでいる方も多いと思います。
しかしながら、最新の高画素数のモニター環境で視聴すると、画像が粗くモヤモヤと輪郭もぼやけていて、色味も何か違うと感じてしまいます。
また古いデジカメやガラケーなどの低画素カメラで撮影した動画は、大画面で視聴すると解像度が低いので、ブロックノイズで見るに耐えられません。
そこで今回は、自分で簡易的にできる動画のリマスター方法のやり方をご紹介します。無料アプリを使った個人でもできる方法ですので、気軽に試してみて下さい。
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リマスターとは
「デジタルリマスター版」という高画質化した昔の映画は、驚くほど美しく鮮明に仕上がっています。
このようにアナログ動画をデジタルデータとして取り込み、デジタル修復・補正を施す事をリマスターと言います。内容はノイズを除去し、画面の揺れを抑えたり明るさを均一化、画面のコントラスト、色の調整など多岐にわたります。
映画では、オリジナル作品を重視するために、当時のスタッフにも相談しながら修復作業を進めると聞きました。
自分の思い出のホームビデオやテレビ番組も、映画と同じようにリマスターしたいと思いますよね。
実際の映画に施すデジタルリマスターは、1コマずつ丁寧に修正し、欠けているフレームを前後のフレームからコピーして補完しつつ、レタッチ、修正しながらフレームレートを上げます。
低解像度の動画の高解像度化は、もともと動画内には存在しない情報を補完することになるので、人の手による作業が中心になるようです。
この作業は素人には到底できないので、今回は動画編集ソフトに幾つもフィルターを掛ける事で自動でデジタルリマスターしてゆきます。
aviutil
「KENくん」により開発されたフリーの動画編集ソフト「aviutil」を使って、拡張プラグインのフィルター類でリマスターします。
本体を持っていない方は「AviUtlのお部屋」からアプリを入手します。
プラグインのインストール方法
今回はaviutilデフォルトのフィルターの他、追加プラグインをインストールして使用します。
ダウンロードしたフィルターは、aviutilのフォルダー内の「plugins」フォルダーに入れるだけ。フォルダーのまま入れて構いません。
※ プラグインによっては「aviutil.exe」がインストールされているルート上に、直接入れるタイプのフィルターもあります
メニューの「表示」から「ツールウィンドウの表示」にチェックを入れると、フィルターが一発で適用・設定できるので便利です
アップコンバート(取り込み→リサイズ)
今回用意した素材動画は352×362、アスペクト比が少し狂っていますが約4:3のSD画質以下の低画質な動画です。
このままでは通常のモニターやテレビで観難いので、最初にアスペクト比16:9に変更し、画素数を720p(1280×720)のHD画質に拡大します。
低い解像度のデータを「高解像度化」するアップコンバート作業です。
aviutilに動画をドロップし1280×720に指定
細かく調整してより大きくしたい場合、FHD画質 1920×1080などでも良いでしょう。後からでも「設定」「サイズの変更」からリサイズする事も可能です。
基本効果エフェクトから「拡大率」のスライダーを操作して縦一杯に伸ばします。これだけで動画の左右が黒く表示されたHD画質になります
X,Y,Z軸を0.0にする事でオブジェクト(動画)を中央に配置する事ができます
綺麗にリサイズできる「AviUtl用リサイズプラグイン」を使用するという方法もあります。このプラグインは少し使い方にコツが必要なので、今回は割愛します。
プラグイン
当然、動画の状態により、使うフィルターの種類や強度は異なります。テスト出力のたびに、全てを出力していると、何度も長時間エンコードする事になり作業に何日も掛かってしまいます。設定が決まるまで数分だけを出力して、仕上がりを何通りも試してみると良いでしょう。「再生ウィンドウ」である程度は確認できますが、エンコード後とは若干異なります。
虫眼鏡プラグイン
このフィルターは、画像の一部を拡大表示して確認できるプラグインです。入れておくと、常に拡大表示ができて編集作業が捗ります。
インストール方法は、aviutil.exeと同じフォルダーに「loupe360.auf」を入れるだけ。メニューの「表示」に「虫眼鏡の表示」項目が追加されます。
色調補正
aviutilのデフォルトで入っているフィルターです。「明るさ」「コントラスト」「ガンマ」「輝度」「色の濃さ」「色合い」を調節できます。
色合いについては、次の「拡張色調補正」で微調整するので、ある程度で構いません。
拡張色調補正
動画の色調を細かく指定する事ができるフィルターです。1つのシーンだけで補正すると、他のシーンが不自然になる事がありますので、シークバーを動かして色々なフレームでチェックしてみてください。
- RGBの同期:RGB系のパラメータを動かした時に、R,G,Bの対応するバーを同時に調整できる
- TV -> PC スケール補正:色調を「リミテッドレンジ」から「フルレンジ」に変換する設定
- PC -> TV スケール補正:色調を「フルレンジ」から「リミテッドレンジ」に変換する設定
制限解除のフルレンジ(TV -> PC スケール補正)にチェックを入れます
私はノイズ除去・シャープマスクなどを適用した後に、仕上げに再調整しています
ワープシャープフィルタ マルチスレッド(WarpSharpMT) ex
動画を拡大リサイズしたことにより太くなってしまった輪郭線を、細くはっきりと調整します。ただし、このフィルターはアニメを綺麗に拡大する用途に向いており、実写で強く掛けると油絵のように不自然になってしまう事があります。
どのフィルターを掛ける時も、上で紹介した「虫眼鏡の表示」でズームしながら調整すると細かい部分を確認しながら設定できます。
フィルターを適用する強度の値を「depth」で調整します。100~190程度が丁度良いでしょう。
blur:輪郭ぼかしの適用回数
bump:輪郭を抽出する際の閾値
他はデフォルトのままで構わないと思います。
➡ワープシャープフィルタ マルチスレッド(WarpSharpMT) ex
ノイズ除去・時間軸フィルター
ノイズが気になる場合は、aviutil本体機能のノイズ除去フィルター2種類を掛けます。ノイズ除去/ノイズ除去(時間軸)
軽いアナログノイズやデジタルノイズ、ゴースト、ランダムノイズ、モスキートノイズなどの、比較的症状の軽いノイズを除去する事ができます。
粒状のノイズ(インパルスノイズ、ゴマ塩ノイズ)が出ている場合は、 PMD_MTがお勧めです。
バンディング低減フィルタ
空などのグラデーション部の階調が失われ、帯状に見える現象「バンディング」を低減するためのプラグイン。バンディングが起きていない動画に適用すると、細かい線が飛んだりゴマ塩ノイズが発生する原因になります。
アンシャープマスクMT
オブジェクトの境界をはっきりさせて輪郭を浮き立たせます。ただし粗い画質に強めに掛けると、ゴーストが現れたり逆効果になるので注意が必要です。
リンギング低減
リンギングとは、エッジの左右に、等間隔で発生する疑似輪郭の事。このフィルターは、動画内の文字の輪郭がにじんだように表示されるリンギングを低減します。
エッジがはっきりしている動画や、字幕があるテレビ番組、アニメなどで効果を発揮します。
- 「RingFrq」:リンギング低減の中心周波数設定
- 「RingFw」:リンギング低減の周波数幅設定。大きくすると、動画がよりボケます。
- 「RingLv」:リンギング低減のしきい値。大きくすると、よりリンギングが消えますが、動画がボケます。
SmoothD for AviUtl
粗い動画のブロックノイズを除去するプラグイン
➡deblock for AviUtlSmoothD for AviUtl
ソースのデブロック
このプラグインもブロックノイズを低減します。ブロック状にのっぺりとした領域(8×8)を検出して、その中での輝度・色の変化を平均化します。
高域確認にチェックを入れて調整すると、ノイズが出ている箇所を確認しながら調整することができます。
フィルタ処理の順番
最後にフィルターを掛ける順番を指定します
シャープ系のフィルターは後ろに持ってきます。さらにシャープ化で生じたブロックノイズを除去する「SmoothD」や「ソースのデブロック」などは、最後に持ってくると良いでしょう。
出力
出力する動画の方式は、好みで構いません。ここでは定番のコーデック「x264(GUI)Ex」をご紹介します。
x264guiExの導入方法
rigayaの日記兼メモ帳:さんブログより、「x264guiex」をダウンロードしてインストールします。
フィルターを掛けてリマスター作業が終了したら、メニューの「ファイル」「プラグイン出力」「拡張x264(GUI)Ex」 をクリック
ビデオ圧縮から「品質」を調整して「OK」。他は設定はデフォルトのままで、慣れたら自分なりに設定してみて下さい。
ファイル名を指定して「保存」すればエンコードが開始されます。
適用するフィルターが多いほど、エンコードに時間が掛かります。CPU・GPUの性能にもよりますが、4つ適用すると数分の動画でも数時間かかります。
エンコードが終了したら完成!
ソースは捨てるな!
リマスターの方法をご紹介しましたが、それ以前にソースをデジタルデータとして取り込む事に関しての雑感を書いておきます。
ビデオテープをデジタルデータとして取り込んだ後、マスターテープを捨てるのは少し待った方が良いと思います。
私は、かなり昔に取り込んで捨ててしまいました。当時は取り込みソフトも酷いもので、320 x240 のmpgという超低解像度のデジタル動画で保存したデータもあります。
またMiniDVテープの動画を取り込んで、DVD化しましたが、これも所詮720×480の画素数しかありません。
その後、HD画質で取り込んだデータもありますが、コーデックがDivXやXvidで圧縮していたりするので、あまり綺麗ではありません。
最新のキャプチャー機器で取り込めば、手元に残っている動画の数倍綺麗で高解像度な動画を取り込めたと後悔しています。
ちなみにMiniDVテープはまだ捨てていませんが、ビデオカメラを捨ててしまい新たに取り組む事ができません 🙁
今後、8K画面なども一般化されるので、キャプチャー機器も進化すると思います。場合によっては、キャプチャーしつつAiを使ったオートリマスター、という夢の未来が待っているかもしれません。マスターテープは、捨てずに保存しておく事をお勧めします。
ちなみにソフトでAiアップスケーリング作業する方法もあるのですが、いまいちリアリティに欠けるので、現段階では手動の方が思ったようにリマスターできると思います。
タカシ
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